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ガスバリア性とは

ガスバリア性とは、特定のガスが物質を通過するのを防ぐ能力を指します。ガスバリア性は包装材料において重要な特性であり、食品や医薬品などの品質を長期間保つために利用されます。ガスバリア性は酸素、二酸化炭素、窒素、水蒸気などのガスの透過を抑制する性能を持っており、食品の酸化や湿気の影響を最小限に抑えることができるため、長期間にわたって食品を新鮮な状態に保つことができます。

ガスバリア性フィルムを使用した包装の仕組み

ガスバリア性フィルムを使用した包装の例として、真空包装やガス置換包装があります。真空包装では、袋内の空気を取り除くことで酸素の影響を排除し、食品の酸化を防ぎます。ガス置換包装では、袋内の空気を窒素や二酸化炭素などのガスに置き換えることで、酸素の影響を抑えます。これにより、食品の鮮度を長期間維持することができます。

 

また、ガスバリア性フィルムの製造には、押出しラミネートや共押出しなどの技術が用いられます。押出しラミネートでは、異なる材料を層状に重ねることで、多層フィルムを作成しガスバリア性を持たせます。一方、共押出しでは、複数の材料を同時に押し出して多層フィルムを形成します。これにより、各層の特性を最大限に活かしたガスバリア性フィルムが作られます。

ガスバリア性フィルムの種類と材料

次に、代表的なガスバリア性フィルムの種類とその材料について、適用される食品例も交えながら解説します。

アルミ箔

アルミ箔は、ガスバリア性フィルムの中で最も優れたバリア性能を持つ材料の一つです。酸素、水蒸気、光、香りなどの透過をほぼ完全に防ぐことができるため、食品の鮮度を長期間にわたり保つことができるガスバリア性フィルムです。アルミ箔は、スナック菓子、コーヒー、チョコレート、薬品など、多岐にわたる製品の包装に利用されています。ただし、アルミ箔は折り曲げに弱く、ピンホールが生じやすいという欠点があります。そのため、多層構造のガスバリア性フィルムとして使用されることが一般的です。

透明蒸着フィルム(透明蒸着PET)

透明蒸着フィルム(透明蒸着PET)は、ポリエチレンテレフタレート(PET)に酸化アルミニウムや酸化ケイ素などの無機物を高温で蒸発させ薄く蒸着させることで、透明性とバリア性能をもたせたフィルムです。特に食品包装や電子機器の保護材に使用されているガスバリア性フィルムです。透明蒸着フィルムは、透明でありながらガスバリア性を持つことで、食品に使用した際には鮮度を長期間保持することが可能となり、製品の品質向上に貢献します。また、ガスバリア性以外にも耐熱性や耐湿性にも優れているため、過酷な環境下でも安定した性能を発揮します。

 

さらに、透明蒸着PETはリサイクルが容易で、環境負荷を低減するエコフレンドリーなガスバリア性素材です。企業のサステナビリティ戦略においても重要な役割を果たすことができます。加えて、印刷適性や加工性にも優れており、さまざまなデザインや用途に柔軟に対応できる点も魅力です。

バリアナイロン

バリアナイロンは、ガスバリア性を持つ特殊なナイロンフィルムです。この素材は、酸素や湿気から製品を守り、品質保持期間を延ばすことが期待できます。特に、酸化による劣化が問題となる製品に対しては、高いガスバリア性を発揮します。
バリアナイロンは、耐久性や透明性にも優れており、製品の見栄えを損なうことなく保護することができ、また軽量であるため輸送コストの削減にも寄与します。さらに、リサイクルが可能なことで、環境負荷を軽減する点でも注目されているガスバリア性フィルムです。

Kコートフィルム

Kコートフィルムとは、酸素バリア性(ガスバリア性)と水蒸気バリア性(防湿性)の機能を持つPVDC(ポリ塩化ビニリデン)をフィルムの片面にコーティングした透明なフィルムです。ガスバリア性、防湿性、保香性、透明性があることで、製品の外観を損なうことなく、長期間にわたって効果的な保護を提供します。乾燥食品のガス充填包装、脱酸素剤封入包装、防湿包装など幅広く使用されています。

エチレンビニルアルコール(EVOH)

エチレンビニルアルコール(EVOH)は、非常に高いバリア性を持つ材料であり、酸素や二酸化炭素、水蒸気の透過を極めて低く抑えることができます。EVOHフィルムは、食品の鮮度を長期間にわたり保持するために使用され、特に酸化しやすい製品の包装に適しています。例えば、調理済み食品や高級食材、医薬品などに利用されることが多いです。EVOHは単独では機械的強度が低いため、他の材料と組み合わせて多層フィルムとして使用されることが一般的です。

ガスバリア性包装のメリット

続いて、ガスバリア性包装を使用するメリットをまとめて解説していきます。

食品の長期保存

ガスバリア性包装の最大のメリットの一つは、食品の長期保存を可能にする点です。通常、食品は酸素や湿気に触れることで酸化や劣化が進みます。これにより、食品の味や品質が低下し、さらに健康に悪影響を及ぼす可能性もあります。しかし、ガスバリア性包装は、酸素や湿気を遮断する特性を持つため、食品の酸化や劣化を防ぎます。このガスバリア特性により、保存期間が大幅に延び、消費者に新鮮で高品質な食品を提供することが可能になり、代表的なガスバリア包装である真空パックやガス充填包装は、多くの生鮮食品や加工食品の保存に利用されております。

鮮度保持

次に、ガスバリア性包装は食品の鮮度保持にも非常に有効です。前述とも重なりますが、食品の風味や栄養価は、酸素や湿気に触れることで劣化しやすくなります。ガスバリア性包装はこれらの要因を遮断することで、食品の風味や栄養価を長期間にわたり保持します。例えば、コーヒー豆やお茶の葉は酸素に触れると風味が損なわれやすいですが、ガスバリア性包装を使用することで、その風味を長期間にわたり保持することができ、また、ビタミンやミネラルなどの栄養素も劣化しにくくなります。

廃棄物削減と環境への影響

ガスバリア性包装は廃棄物削減と環境保護にも大きく貢献します。食品ロスは世界的な問題であり、その多くは食品の劣化や腐敗によるものです。ガスバリア性包装を使用することで、食品の保存期間が延び、廃棄される食品の量を減少させることが期待できます。食品ロスの削減ができれば、結果として環境への負荷も軽減されます。さらに、ガスバリア性包装はリサイクル可能な素材で作られることが多く、持続可能な包装ソリューションとしても注目されています。これにより、ガスバリア性フィルムは環境保護に対する意識が高まる中で、企業や消費者にとっても魅力的な選択肢となります。

ガスバリア包装の応用事例

食品業界、食品業界以外で、ガスバリア包装を応用した事例をそれぞれご紹介します。
 
食品業界の応用事例
ガスバリア包装は、特に食品業界において保存方法の革新技術として注目されています。高い防湿性と酸素遮断性を持つガスバリア包装は、現在では食品の鮮度を長期間維持するために不可欠な技術です。例えば、真空パックやMAP(Modified Atmosphere Packaging)などの技術を駆使することで、肉類や乳製品、果物や野菜の品質を効果的に保つことができます。これにより、食品ロスの削減や消費者満足度の向上が実現され、業界全体の効率化にも貢献しています。
 
食品業界以外での応用事例
一方、食品業界以外でもガスバリア包装の応用は広がっています。医薬品や化粧品など、品質保持が重要な製品においても、この技術は大いに役立ちます。例えば、医薬品においては、有効成分を長期間安定させるために、ガスバリア性の高い包装が使用されています。また、電子部品や化学製品などには、湿気や酸素による劣化を防ぐためにガスバリア包装が応用されています。これにより、製品の信頼性と安全性が向上し、企業のブランド価値の維持にも寄与しています。

ガスバリア性包装の選び方と注意点

ここまではガスバリア性包装の種類や、使用するメリットについて解説してきました。
最後に、ガスバリア性包装の効果を最適にするために、食品の種類や保存条件に応じたガスバリア性包装の選定方法を解説していきます。

適切なガスバリア性包装の選定方法

1.酸素バリア性

酸素は食品の酸化を引き起こし、品質を劣化させる主要な要因です。酸化による劣化を防ぐためには、高い酸素バリア性を持つ包装材料を選ぶ必要があります。例えば、ナイロンやEVOH(エチレンビニルアルコール共重合体)は高い酸素バリア性を持つため、酸化しやすい食品(肉製品や乳製品など)に適しています。

 

2.水蒸気バリア性

水蒸気は食品の湿度を変化させ、カビの発生や品質の低下を招きます。湿度に敏感な食品(乾燥食品やスナック菓子など)には、高い水蒸気バリア性を持つ包装材料が必要です。ポリエチレンやポリプロピレンは優れた水蒸気バリア性を持ち、湿気から食品を守る効果があります。

 

3.二酸化炭素バリア性

炭酸飲料や発酵食品など、二酸化炭素を含む食品には、二酸化炭素バリア性が重要です。二酸化炭素の透過を防ぐことで、炭酸の抜けや発酵の進行を抑えることができます。PET(ポリエチレンテレフタレート)やPVDC(ポリ塩化ビニリデン)は、二酸化炭素バリア性に優れた材料として知られています。

 

4.多層構造フィルムの利用

単一の材料だけでは十分なバリア性を確保できない場合、多層構造フィルムを利用するのも一つの方法です。例えば、透湿度の低いPP(ポリプロピレン)に、ガスバリア性を付与することができるEVOH(エチレンビニルアルコール共重合樹脂)を組み合わせた多層フィルムは、透明性を保持しながらガスバリア性を持つ包装材料となります。

注意点

1.コスト

高性能なバリア性を持つ包装材料は、その分コストも高くなる傾向があります。食品の価格帯や販売戦略に応じて、コストパフォーマンスを考慮した選定が 求められます。

 

2.リサイクル性

現代では環境への配慮も注意が必要です。多層構造フィルムや特殊なバリア性材料は、リサイクルが難しい場合がありますので、リサイクル可能な素材を選ぶことで、環境負荷を軽減することができます。

 

3.加工適性

包装材料の加工適性を確認することも重要です。例えば、熱成形やシール性能など、実際の包装工程で問題なく使用できるかどうかを確認する必要があります。

 

4.規制遵守

食品包装材料は、各国の食品安全規制に適合している必要があります。特に輸出を考慮する場合は、目的地の規制に準拠した材料を選ぶことを注意しましょう。

まとめ

本コラムでは、ガスバリア性包装の概要から適切な選び方まで解説してきました。
丸信では、創業50年以上のノウハウを活かし、包装資材の調達からパッケージの企画・提案、販促企画や広報支援、食品衛生や食品表示のサポートまで、幅広いソリューションでお客様の軟包材・包装フィルムの課題を解決いたします。お困り事がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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